衛生士の京極です。
今回は禁煙についてのお話です。
タバコがからだに良くないということはみなさんよくご存知だと思います。
「いつかやめなくては」と思っていらっしゃる喫煙者の方も多いでしょう。
コロナ禍での様々なストレスやリモートワークで家にいる時間が増えた事により喫煙本数が増えた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
口腔内は毒性の強いタバコの煙に直接触れる場所です
それだけに受ける被害も大きく、口腔がん、歯周病の重症化や治療・予防効果への悪影響、外科治療後の回復の遅れ、むし歯のリスクが上がる等があげられます。
全身的な影響も深刻でタバコの有害物質が血流に乗り全身に運ばれると細菌と戦いからだを守る免疫細胞の元気がなくなったり、血流も悪くなります。
最近ではタバコの有害物質の刺激が、歯周病菌やむし歯菌を鍛え上げて病原性を強くするといわれています。
タバコによる全身の免疫力や修復力の低下に加え、歯周病菌やむし歯菌自体が凶暴になるため治療をしても思うように回復せず、一旦良くなっても再発しやすいのです。
1.歯周病への影響
タバコを吸う人の歯周病になった歯ぐきは有害物質の影響で歯ぐきが硬くなり腫れても分かりにくく、さらに血管が収縮し、血流が悪いため出血も少ないので歯周病の重症化を見逃しやすいのです。
歯周病になるリスクはヘビースモーカーの人ほど高く、毎日20本吸う人は、吸わない人の4倍以上リスクが上がると言われます。
そのうえ歯石除去、歯周外科手術といった治療や、再発しないようにメインテナンスをしてもその効果は吸わない人の半分程度しか得られません。
2.むし歯への影響
タバコを吸うことで歯の表面についたベタベタのヤニの上にはプラークが付きやすく、歯ブラシで磨いても取り除きにくくなります。
また、むし歯菌の凶暴化によりパワーアップした菌が歯を溶かす酸をジャンジャンと作ったり、作った酸をプラーク内にたっぷり溜め込み、濃度を上げることでむし歯になるリスクが高くなります。
タバコを吸わない人、禁煙した人と比べるとタバコを吸う人がむし歯になるリスクは5.3倍といわれています。
むし歯が大きくなると、神経の治療で何度も通院して根っこの中をきれいにお掃除しても、喫煙の影響でからだの修復機能が弱っているために治療後の回復に時間がかかったり、痛みや違和感も続きやすいです。
また、免疫細胞が速やかに働かないため、治療が終わったとしても痛みが出たり歯ぐきが腫れたり再発リスクも増えます。
歯周病もむし歯もタバコを吸っていることで罹患率が高くなるだけでなく、なかなか治療がうまく進まず治療回数が増えたり痛い思いもすることになります。
3.歯を失ったら?
もし、抜歯になってしまった場合でもからだの免疫機能が弱っているため傷の治りが遅く違和感が続いたり、細菌感染のリスクも増えます。
インプラントの場合でも、インプラント埋入後歯槽骨とガッチリ結合するまでに時間がかかったり、結合がうまくいかずにインプラントが抜けてしまう場合もあります。
治療が成功し快適に使っていたとしてもメインテナンスを怠ることでインプラント周囲炎を起こし、周りの骨が吸収しグラグラしてきて(骨がなくなってしまって)抜けてしまうこともあります。
4.お子様への影響も・・・
タバコの害は吸っている本人だけでなく周りの子供さんやお孫さんにまで及ぶことをご存知ですか?
タバコの主流煙より副流煙の方が有害物質の濃度が高いのです。
育ち盛りのお子さんへの副流煙の影響は大きく、肺炎や喘息、気管支炎、中耳炎、乳幼児突然死症候群との関係が指摘されています。
歯科でも家族に喫煙者がいない子に比べ、家族が面前で喫煙する子供のほうが3歳になるまでにむし歯ができるリスクが2.14倍になると言われ
タバコの影響だけが原因とは言いきれませんが、歯ぐきへの色素沈着も起こってきます。
↓↓↓家族が喫煙者の幼児の歯ぐき 黒っぽい色素沈着が見られます↓↓↓
↓↓↓健康な歯ぐき 薄いピンク色のきれいな歯茎です↓↓↓
このようにお口への影響は多伎にわたります。
禁煙することで凶暴化し悪玉化していた細菌の性質が穏やかになり、からだの免疫力や修復力も徐々に戻ってきて、歯科治療の効果は格段に良くなります。
歯科に行くたび「禁煙、禁煙」と言われても不愉快な気持ちになる方もいらっしゃるかもしれませんが、禁煙することで得られるはずの治療効果を逃してしまうことを考えると、やはり「この機会に禁煙しませんか?」と伝えざるを得ないのです。
・禁煙のきっかけを提供すること
・禁煙治療をすることでどれほど歯や歯ぐきがキレイで健康になったか、歯が汚れなくなったかを患者さんご自身に目で見て変化を知っていただくこと
・治療後も再発予防のため定期的にメインテナンスに通って頂くという他科にはない予防プログラムを通して禁煙継続のモチベーションアップのお手伝い
ができたらと思います。