歯が溶ける酸蝕症とは

こんにちは!丸尾歯科衛生士の京極です。

今回は酸蝕症についてのお話です。

みなさんは「酸蝕症」という歯の病気をご存知ですか?

酸蝕症とは

酸度の強い食べ物や飲み物を摂取したり、逆流した胃酸に日常的にさらされることにより、

歯が病的に溶けて、傷んでしまう症状をいいます。

この酸蝕症、むし歯や歯周病に続く第3の歯科疾患として注目されているのです!

歯は元々『酸』がとても苦手です。

体の中で一番硬い歯ですが、酸に触れると化学反応を起こしてすぐに溶けてしまいます。

なのに歯が溶けてなくならないのは、唾液が酸を洗い流し、中和して歯を守ってくれているからなんです。

しかしこの唾液の能力にも残念ながら限界があって、強い酸にさらされ続けると再石灰化が間に合わないことで歯が溶けてしまうのです。

酸蝕症?自分には関係ないと思っているそこのあなた!

国内の実態調査では10代から80代の幅広い年代を通じ軽度なものまで入れると、4人に1人が酸蝕症になっていると言われています。

4人に1人は多いですよね(^_^;)酸蝕症は現代の食生活や生活習慣と関わりの深い病気です。

さて酸蝕症とむし歯、両方とも歯が溶ける病気ですがこの二つの病気の決定的な違いは「被害の範囲」です!

むし歯はプラーク(歯垢)に住むむし歯菌の出す酸により限局的に歯が溶けます。進行すると穴が開いて痛みが出ることも。
一方酸蝕症は、酸に触れた歯面全体が広範囲に溶けます。まず表層のエナメル質が溶け、進行すると象牙質がむき出しに。知覚過敏が起きやすいです。

そして怖いのは酸蝕症で硬いエナメル質が溶けて薄くなった所にむし歯ができると進行が加速してしまうことです。

また、酸で軟らかくなった歯は歯ブラシの摩擦による磨耗、歯ぎしりによる咬耗も病的に進行しやすく、トラブルが拡大しやすいのも特徴です。

酸蝕症で歯が溶けてさらに歯の側面は磨耗、噛み合わせは咬耗しています。
歯の原型が無いほどです。恐ろしい…

そんな怖い酸蝕症。原因の一つは胃酸です。

逆流性食道炎や摂食障害により繰り返される嘔吐により、口の中(歯)が胃酸に触れることで酸蝕症を引き起こしてしまいます。

胃酸は強酸性ですので放っておくと歯の裏側や奥歯のほうから歯が溶けはじめ、よく噛めなくなったり知覚過敏を引き起こすこともあります。

酸蝕症は現代病とも言われていますので、何かとストレスの多い昨今逆流性食道炎や摂食障害のある方も増えていると思います。

もう一つ酸蝕症が現代病と言われる理由として、酸性食品によるもの。

季節物だった柑橘類が一年中手に入るようになったり、お酒も果汁たっぷりのチューハイやワインを飲むことが増えたことにあります。

そして子供達が大好きなおやつはコーラや柑橘ジュース、グミや梅菓子といった酸性のものがどこでも手に入り、酸に触れることが増えました。

さらに注目すべきなのが健康志向です!

健康の為に柑橘系果物を食べたりお酢を飲んでいる、乳酸菌飲料を飲んでいる等、

意識の高い人ほど熱心に続けるため、リスクが増大します。

酸蝕症を防ぐために重要なのは「酸性飲食物の過剰摂取」に気付いて唾液が歯を守ってくれる範囲で、体だけでなく歯の健康にも気を配ることです。

先ほどちらっとジュースやおやつも原因と言いましたが酸蝕症は大人だけでなく子供にも注意が必要です。

乳歯や生えたての永久歯のエナメル質は未成熟で軟らかく、むし歯にも酸蝕症にもなりやすいのです!

赤ちゃんがぐずったら哺乳瓶でジュースを飲ませる習慣があると、前歯の裏側に酸が集中的に触れ、むし歯、酸蝕症の原因になります。

発熱時にイオン飲料を飲ませた後はガーゼで歯の裏側を拭ってあげるといいです。

炭酸飲料や体に良いとCMでもお馴染みの乳酸菌飲料や栄養ドリンクも、酸味や炭酸が強いものはちびちび飲んでしまいがちですが、ちびちび飲むことでお口の中がたびたび酸性になるのでリスクが高くなります。

ちびちび飲むのはやめたり、飲んだ後にお水やお茶を飲んだりうがいするなど工夫してダメージを少なくしましょう。

そして健康の為に柑橘類を食べたりお酢を飲んでいる方も、カプセル入りのお酢に代えたり、薄めたり、先程同様飲んだ後にお水やお茶を飲む&うがいするようにしましょう。

そしてそして暑い夏!

晩酌にビールやチューハイ、ワインを飲まれる方!最高ですよね(^o^)

余韻に浸りながら眠りたいところですがこれら酸性の高い飲み物を飲んで、そのまま寝てしまうことでリスク増大です。

寝酒しないことと、一緒におつまみを食べることで唾液の分泌を促すようにしましょう。

ジョギングや筋トレをした後にスポーツドリンクを飲む方や、子供さんで部活動の間や後にスポーツドリンク飲んだり今だと熱中症対策でスポーツドリンクを飲まれる方多いと思います。

運動中は唾液が乾いて唾液の自浄作用(洗い流す作用)がきかず酸蝕症のリスクが増大します。

なるべくお茶かお水を飲み、熱中症対策でスポーツ飲料を飲んだ場合も、後でお茶やお水を飲みましょう。

上の表は普段飲んだりスーパーなどで手に入れやすい飲み物のpHを表示したものです。水色で区切ってあるところが歯のエナメル質が溶け出すと言われる臨界pH5.5(むし歯を想定したpH)です。これを見ると牛乳やお水、お茶以外はほぼ臨界pHを下回る(酸性)飲み物です。コーラや栄養ドリンクはpHが低くつまり酸性度が物凄く高くコーラにいたっては砂糖の含有量が多いのでむし歯予防の観点からもおすすめしません。

スポーツドリンクのpHもpH3.5と低いですね。

熱中症予防や発熱時の摂取の仕方も気を付けたいですね!

酸蝕症予防はむし歯予防と共通する事が多いのですが以下のように

・ちびちび食べたり飲んだりしない

・酸性の食べ物や飲み物を摂った後は水かお茶を飲む

・酸性の食べ物や飲み物を摂った後はすぐに歯磨きせず、水でうがいしてから歯磨きする(ゴシゴシ磨かない)

・健康の為お酢を摂取するならカプセルタイプを選ぶ

など、暑い夏、体の健康を守りながら歯の健康も守って行きましょう!

 

イラスト抜粋:クインテッセンス出版 nico